Mr.Childrenの「交響曲第二十番」は「SOUNDTRACKS」
ミスチルさんの新しいアルバム「SOUNDTRACKS」がもろ交響曲。アルバムが20枚目っていうことで20番。いやモーツァルトやん!ストリングスと融合しすぎやろ!と若手漫才師はツッコミを入れるはず。
くるりの岸田さんも交響曲を手掛けていたりしますが、多分岸田さんは嫉妬するんじゃないかなとか思ったりしてます。勝手ながら。
でも明らかに前作の「重力と呼吸」とは違う感じがしますよね。瑞々しいバンドサウンド主体の「動」という感じを表したのが「重力と呼吸」やとするならば、ストリングスを混ぜて「静」という繊細さを表したのが「SOUNDTRACKS」やと感じます。もはや対極なんですよね。
で、テーマが「終焉」なのかなとも思ったりしてます。曲の歌詞に死を連想させる・終わについて問いかけるものが多いなぁと勝手ながら感じてまして。それは「深海」というアルバムと似ながら若干違うものかなとも思う訳です。それは下で詳しく。
そんな今作をじっくりと見ていきます!終わりを意識しながら終わらないバンドの最高傑作をご覧あれ!
- DANCING SHOES
- Brand new planet
- turn over?
- 君と重ねたモノローグ
- losstime
- Documentary film
- Birthday
- others
- The song of praise
- memories
- アルバム「深海」と「Q」との関係性
- サウンド重視でアルバム「REFLECTION」以降の円熟味を増した演奏を随所に堪能できる
- 最後に
DANCING SHOES
このアルバムの中でも珍しいロックな曲。ロックと言ってもサビでポップさが全開になるのでそこはご愛嬌で。(*´∇`*)テヘッ
このアルバムを聴くまでこの曲がどんな感じか知らなかった訳ですが、聴いたらイントロが怖いなぁと。表すなら髭男の「Laughter」を少しダークにした感じ。
Official髭男dism - Laughter[Official Video]
Aメロで聴こえるアコギのソロプレイ。NUMBER GIRLの「鉄風 鋭くなって」のサビ前でのギターの掛け合いそのものですよ。
音の暴力。それがアコギに変わっただけで優しいジャブの連続な訳です。
話は変わって、1番のサビ前の歌詞で
後退りしたり
地団駄踏んだり
何このくだり
ってあるんですけど、「たり(だり)」で韻を踏んどるのがさすがやと思いましたね。恐るべし語感の魔術師。ここは「ai(あい)」の母音ゾーンやなと。ちなみに2番も出てきます。これには本田圭佑もびっくりですわ。
そしたらサビで開けると。ストリングスによって音が整備されたからこそのポップさやと思いますね。ロックでもポップな曲ってミスチルには多くあるんですけど、その中でもこの曲は異質。アルバム「深海」収録の「手紙」の後に入れたら合うくらい異質かなと。
そんなロックとストリングスの融合でホールで聴きたくなってくる歌。寧ろホールでしか聴きたくない。大化け必須で間違いなし。
Brand new planet
2曲目にしてアルバム終盤かのような盛り上がり。ドラマ「姉ちゃんの恋人」の主題歌っすね。略して姉恋。もうこの曲についての説明は要らんでしょっていうくらいパワープレイされてますよね。YouTubeにもMVありますし。
Mr.Children 「Brand new planet」 from “MINE”
でもコメント欄を見とって面白いなぁと思ったのが、アルバム「BOLERO」に収録されている「Brandnew my lover」を聴きに来た人が多かったこと。いわゆる「Brand new繋がり」での訪問者が多かったとで。
Mr.Children 「Brandnew my lover」 MUSIC VIDEO
そこで尖ったミスチルを観たことによって新しいファンを欲しいまでにしたのは言うまでもないんですよね。ここに着想を得て「新しい欲しいまでもうすぐ」の歌詞を書いたのは言うまでもない。(フェイク)
でも、この曲を演奏して「幻聴」に行く流れが僕の脳内で開催されたホールツアーにてやってましたね。えぇ。曲のキーで言えばE♭で繊細な音に支配されとった。良かったっすわ。その流れから「海にて、心は裸になりたがる」を流すと目の前はアリーナの景色。盛り上がるの必須。
そんな新しいLIVEの定番曲になりそうな予感が詰まった曲。アリーナで聴いたら気持ち良いんやろうなぁ…。
turn over?
アルバムの先行配信シングル。この曲はドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」の主題歌でしたね。略してカネ恋。
前曲から見て姉恋→カネ恋という恋繋がり。お台場と赤坂を行き来しましたね。これは。ちなみに次の曲は「どら焼きが恋人」ことドラえもんの映画主題歌なんすよね。やからドラ恋。どんだけ恋しとるんやて。これやったら僕はFA移籍してプロ野球の広島東洋カープに行きますわ。
話は戻して。アコースティックな感じがまた良きですよね~。アルバム「Versus」までのアルバムに収録されていてもおかしくないくらいのポップさがある訳です。やから懐かしいなと。あと聴くだけでホカホカしますし。そんでもってサビで転調する展開。これがまた良いんだで。
現時点(2020年12月5日0時)で貴重なアルバム収録曲のサブスク配信楽曲なので、そちらもよろしくです。
君と重ねたモノローグ
映画「ドラえもん のび太の新恐竜」の主題歌でしたね。観に行ってないんですけど良い作品というのを聴いております。
そんなこの曲は今作の中でも収録時間が長い作品なんですよね。9分39秒の「雨のち晴れ」のRemix version や8分52秒の「ゆりかごのある丘から」に匹敵する7分32秒という時間。長いとはいってもオーケストラの演奏であるとか、そしてアウトロの終わった感じを出しながらまた始まる感じがあるんですよね。なのでアウトロで長くなっとる印象かなと。フェードインするとこは迫り来る感じが毎回して怖いんすよね。やめてほしい(えっ)
初めて聴いた時はアルバム「Q」に収録されている「安らげる場所」っぽいなぁと思ったんですよね。ただ、ドラえもんの主題歌にこれは相応しいなとも思ったり。このアウトロのディズニー感が良きなんすよね。いや、どっち。
losstime
かと思えばアルバム「I❤️U」に収録されている「Door」を彷彿とさせる収録時間の短さの曲がここで入ってくると。2分27秒。
前曲と合わせるとほぼ10分という時間なんすよね。筋トレで10分測りたい時はこの2曲を再生するとぴったりです。玄人はここにI❤️Uツアーの「Hallelujah」(LIVE音源ほぼ10分)を流しながらプラス10分の鬼トレをするはずでしょう。ジャパネットたかたなら手数料は取りませんよ~!この機会に是非お試しください!
というのは置いといて、この曲はサッカー関連の曲かなと思ったんです。桜井さんは無類のサッカー好きですし、何より「ロスタイム」と聞いてそのように変換したのが原因なんですけどね。でも、それがまさかの老いに対しての楽曲やったというね。全然違うやん!過去の自分にイエローカード1枚ですわ。
全編アルペジオで暗い曲ながらアウトロに向かって明るくなっとる構成なんですよね。とは言いながら「血の管」的な少しダークな要素もあるなぁと思います。それがまぁ良いんですわ。
追加で、この曲のサビ終わりのメロディーがなんか似とるなぁと思ったら「BLUE」のサビ終わりと同じ感じでしたね。(伝われ)
Documentary film
そういった前曲の流れからこの曲を聴くと年齢に対するもの(老いとか…)をより感じるんすよね。終わりに対することとか。それをまとめた曲が「Documentary film」なのかなと思います。MVとLIVEパフォーマンスのこれがまぁグッと来るわけです。これ観てエモーショナルになる人はかなりおるはず。間違いねぇ。
初めて聴いた時は「Another Story」っぽいなぁと思ったんですよね。インポートしてから連チャンで聴く遊びをしとったら切なすぎて泣きました。この流れはダメっすね。泣きたい時に聴くのをオススメします。特にラスサビでジーンですわ。
Birthday
シングル作品として3月にリリースされましたね。「君と重ねたモノローグ」同様にドラえもんの映画主題歌でした。ドラえもん観とった人には聴き馴染みのある曲やと思います。「いっつも誕生日祝っとるあの歌手か~」と。
シングルに比べて音がクリアになっとるんですよ。ミックスの違いやと思うんですけどね。
あとは、演奏終わりに出た余白の時間を切ったことで5秒くらい短くなったのかなと思います。それによって次の曲と繋がっとるように聴こえるんすよね。疾走感もより増しとるし。それがこの曲の魅力やなと思う訳です。
others
このアルバムの中で大衆に一番聴かれとる曲が「others」やと個人的に思っとるんすよね。
「君の指に触れ~ 唇に触れ~ 時が止まったぁ」
これだけでコップの中の氷が「カランッ」っていうオノマトペが脳内で再生されるかもですね。麒麟の特製レモンサワーが飲みたいところです。
この曲なんですけども、夜に聴くのがピッタリなんですよね。アダルトチックなサウンドが夜を包むといいますか、こんな壮大なバラードありませんよ。ミスチルの曲で例えるなら2009年のLIVEにて「店長オススメの一品です!」と桜井さん自らMCで紹介して演奏された「つよがり」以来かもです。
そんでもって歌詞に「25時の首都高」というフレーズがあるんですよね。僕はこのフレーズ通りに「others」を聴きながら真夜中の首都高を走りたいなぁと思います。そんな夢です。あざーず!あざーす!
The song of praise
積み上げて叩き壊すってスキマスイッチの「全力少年」以来じゃないですか。例えばですけど、NHKをぶっ壊す勢いがスキマスイッチにあるなら、瓦割りのような脱力ながらやっちゃうのがミスチルやと思います。それがこの曲。
日テレ系列「ベストアーティスト2020」で披露されたのは記憶に新しいですよね。桜井さんがアコギを弾きながら歌っとったのは感動でした。1カポに感謝。桜井さんの手癖であるG/A(簡略形のFM7を3fにズラした形) が観れたのも拝めるポイントの1つでしたね。
とりわけE♭のキーが気持ち良い。このキー大好きマンなんでたまらんのですわ。でも朝というより夕方に聴きたいのが本望かな。
とりあえずこの思いをZipperに閉じ込めたいですよね。
memories
ラストでメンバーが演奏しない楽曲ってなると「安らげる場所」以来なのかなと思ったりしてます。実質的な桜井さんソロ曲は上で挙げた「血の管」以来ですけどね。
桜井さんの声にストリングスが乗っかる。一種のコンサートですよこれは。そんでもって聴けば聴くほどストリングスの素晴らしさを知るという。オーケストラのコンサートに行ってみたいなという欲も生まれましたし。こういった音楽の幅を広げるのもアルバムを聴く一つの醍醐味なんすよね。
個人的にこの曲の歌詞で好きなところが以下でして。
ねぇ誰か教えてよ
愛しい気持ちはどうして
こんなにも こんなにも
この心 惑わすのだろう?
いつの日も いつの日も
最後の歌詞の部分。ラストの曲やからこそこのフレーズが響くんやと思うんすよね。問いを投げかけて考えさせる形で終わる。この答えって人それぞれやと思うんですけど、それをやってアルバムが終わる。誰かにとっての「SOUNDTRACKS」ってそういう意味かと思ったりしてます。(伝われpart.2)
人に問いかけるのがこの曲なら、自分で問いかけてまた走って行ったのが前作のラスト曲「皮膚呼吸」なんすよね。対をある意味成しとる。そこが良いんすよ。そこが。
Mr.Children「皮膚呼吸」from Mr.Children Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”
そんなディズニーのような作品がこの曲なんすよね。そんでもってオーケストラ。指揮者がMr.Childrenの交響曲二十番はここで終わるんすよね。
アルバム「深海」と「Q」との関係性
今作から漂うのは紛れもなく「終末感」やと思うんすよね。それは終わりに対するものやと思うんすよ。年齢的なものであるとか音楽的なものとか。そういった老いや死に対してどのように向き合うかというのがアルバムを通して聴くと伝わるんすよね。
そういった「自然的な死」を今作から感じる訳ですが、同じようなコンセプトのアルバムがあのアルバム「深海」やと感じまして。これからは「自発的な死」を感じるんすよね。故にダークな作品になっとると。形は違えど終わりの概念は同じやと思うんで、この2枚からは同じ匂いを感じます。
後はジャケ写的な部分で「Q」と似とるかなと。共にラストの曲が桜井さんのソロ曲的なものなのでそこも似てますね。
そんな「深海」と「Q」と「SOUNDTRACKS」でした。ちなみに3枚とも海外でレコーディングしてます。
サウンド重視でアルバム「REFLECTION」以降の円熟味を増した演奏を随所に堪能できる
ストリングスの音もさることながら、やっぱりメンバーの演奏が今作はどの作品にも比べて渋い。
田原さんで言えば「Documentary film」の間奏のギターソロ。あそこめっちゃ渋くないですか。28年続けてきたミスチルの全てがあそこに詰まっとると思うんすよね。なんとなく「FIGHT CLUB」の間奏のギターソロよりも渋い。
ナカケーで言えば指弾きが今作においては多いなぁと思います。初回盤の映像を観る限りやと「others」や「Documentary film」は指弾きなんすよね。多分他にもあると思います。そういった音に寄り添ったものであるとか、テンポの早い曲には意表を突いた変態的なベースプレイを披露しとるんすよね。「REM」以降のナカケーはガチでエグい。
JENのドラムも今まで聴いたことのない音の数々なんすよね。瑞々しくて音が広がっとるように聴こえると。「others」のドラムプレイとかもろそれで、強弱がハッキリしとるからこそ吸い込まれるような感覚に陥るんすよね。正しくリフレクの「幻聴」みたいやなと。
桜井さんがここにきて高音の伸びが進化しとるのも含めて、円熟味が増して進化を感じさせるものになっとるからこそサウンド重視の今作ができたと思うんですよね。もちろんストリングスの音を聴くためのサウンド重視やと思うんすけど、各メンバーの音を聴くのにも重きを置くとまた新しい視点で楽しめるのかなと思います。
そういった点ではどこか「REFLECTION」を感じさせるとこが多いのかなと思います。あれも円熟味を感じますし。そんなとこかなと。
最後に
長くなりましたけど、これほどまで音の部分で作り込まれたアルバムは聴いたことないです。強いて言うならくるりのアルバム「ワルツを踊れ Tanz Walzer」以来かなとか思ったり。
そんなくるりの岸田さんもモーツァルト嫉妬しそうなアルバムがMr.Childrenの「SOUNDTRACKS」。新しい交響曲二十番の完成っていったとこですかね!